GhaSShee


西洋建築史


Written by Ghasshee Architect 世界建築史(西洋) ルネサンス建築からはフィレンツェにおけるサンタ・マリア・デル・フィオーレを取り上げます。 サンタ・マリア・デル・フィオーレはブルネレスキがクーポラを設計したのが有名です。 サンタ・マリア・デル・フィオーレは13世紀から1世紀半ほどかけて建設されました。 クーポラとランターンの設計はルネサンス期にあたります。 ファサードはネオ・ゴシック様式として19世紀に建設されたようです。 この建築がルネサンス様式として特徴的なのは、構造材として強い引張力を発揮する鉄の導入でしょう。 直径43mの巨大なクーポラは鉄の圧締なくして建たなかったでしょう。 同時期に建てられたブルネレスキが建てた捨子保育院もまた、鉄によりアーチ構造を補強してやることにより細い柱を実現しました。 この細い柱によって作られた回廊は建物の内側に置かれ中庭に面していたり、建物の外側に置かれ広場に面したりしています。 回廊の内側に入り込む採光量が増えました。 この構造上の変革はルネサンス以後における建築に非常に大きな影響を与えたといっても過言ではないでしょう。 ルネサンス期にはこのような中庭を持つパラッツォやヴィラ、市庁舎などが作られました。 新古典主義建築からは何を取り上げましょうか。 ヨーロッパの建築全体について言えることですが、あまり真新しいものが見られず、新古典主義建築においてはその度合いが甚だしく感じられました。 授業を聞いていても、文献を見ても、前出の技術やデザインを使っているように思われます。 この時期に建っている建物とは違う意味を持つ「建築を取り上げる」ということでいいますとロージェの示した「原始的な小屋」は非常に重要であると僕は思います。 建築の根源たるところを見事に表していると思います。 建築の根源的なところは、シロクマが巣穴を掘るところの行為であったり、 土のわずかな割れ目の壁に土を塗りたくって、昆虫が巣穴を作ったり、 軒先に枝を拾い集めて、ツバメが巣を作ったり、鴨川河川敷の橋の下に段ボールで作った家があったり、そういったものであると僕は考えます。 過剰装飾が進み、ロココにいたりいったん落ち着き、そもそも建築とは何であろうか、 と悩みあぐねていたこの時代にロージェが示した、この「原始的な小屋」の持つ意味は非常に大きかったと僕は思うのです。 現代の西洋建築としては、鉄とガラスの建築が非常に一世風靡していると思います。 ノーマンフォスターやリチャード・ロジャースなどが有名でしょう。 しかしながら彼らは現代を代表しているのかというと甚だ疑問であります。 彼らはミースファンデルローエの名残でしょう。鉄とガラスのパッサージュが次々と作られた近代建築の残影ではないでしょうか。 現代を生きる私が敢えてあげるとすれば、レンゾ・ピアノのポンピードセンターでも挙げておきましょうか。 これまでの伝統的に縛られた形態を打ち破って新しい形を作り出しているという点で彼の作品は現代的でありましょう。 これはアントニオ・ガウディの試みたところの話でしょうか。 自然界に存在する形態をマクロなスケールで真似する。といった手法でありましょう。 時間軸のない一時的な空間論としては、このマクロな模倣は的を得ていると僕は思います。 しかし、まだ建築として稚拙であるとも同時に思います。 人間の作りだすもののなんとあさはかなこと! ポリエステルで作られたブランケットは、毛布の断熱効果に敵いません。 コンクリートの強度は木材にかないません。 鉄も単位重量当たりの強さでは、全く木にかないません。 断熱効果、呼吸、多様性、いろいろな人の居住環境を考えると、自然の生成物に匹敵する人工素材などありません。 バイオミミクリー、バイオミメティクス等といった模倣工学が現代発達しつつありますが、それは真似であって、本物にはかなわない。 人間の新の居住環境は自然物によって作られるべきであって、石であったり、木であったり、氷の塊であったり、その地方に根差した建築素材が必ずあるはずです。 西洋の石の建築物は木材枯渇により始まったとされます。 人口の爆発的増加により木の建築物を拒まれ、仕方なく石で作り始めました。 それは、防御上有効であったため、普及したようです。 『建築家なしの建築』という本がルドフスキーの著作として有名でしょう。 かの写真におさめられた建築群のなんと美しいこと! 土着的建築の美しさとは、生命そのものの美を表している気がしてなりません。 シンプル‐これは美しさの要因としてたびたび用いられますが、簡素なたたずまいは簡素な生活をもたらし、人間に生きる喜びを感じさせてくれます。 美しい建築ができあがるのには建築家は要らないようです。 地球上にこの上なく美しい生命体が存在することが重要なのではないでしょうか。 生命の一つにすぎない我々が時間と場所という観念を生み出し、その上に建築が成り立っているのです。 現代我々は環境破壊を行い、破滅の方向に向かっていますが、 そもそも人々が作り出した建築における役割は、我々が存続を目指すならばそれは「生態系への復帰」を導くものでなくてはなりません。 我々が破滅を目指すならばその建築は、未来において、建築として認識されることはないのでしょう。 Reference ~~~ RudofskyBernard. (1987). Architecture Without Architects. Univ of New Mexico Pr. ヴァルター・ベンヤミン. (2003). パサージュ論 第一巻. 岩波書店. 加藤史郎. 組構造による空間構造 : サンタ・マリヤ・デル・フィオーレ大聖堂の場合(空間構造による建築造形7)(<特集>天空海闊 : 大空間構造) . 外尾悦郎. (2006). ガウディの伝言. 光文社. 高橋康夫. (2009). 西洋建築史授業配布資料. 松倉保夫. (1987). ガウディの設計態度. 相模書房. 森田慶一. (1971). 西洋建築入門. 東海大学出版会. 星野道夫. (2000). ノーザンライツ. 新潮社. 星野道夫. (1999). 旅をする木. 文藝春秋. 日本建築学会編. (1983). 西洋建築史図集. 彰国社. 和辻哲郎. (1979). 風土. 岩波書店. ~~~