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Quadratic Vote with Sortition


Original: [An EthResearch by Vitalik](https://ethresear.ch/t/quadratic-voting-with-sortition/6065) This is the Japanese translation of the above site. # 抽選投票 sortition 抽選投票 sortition とは、選挙の手法のひとつである。
ランダムに選ばれた代表者が集って投票をする仕組みである。
直接投票においては、一票の重みが非常に小さいため、
個人が毎度毎度、選挙へいくインセンティブが小さい。
アメリカ合衆国において、A という候補者を、一票が勝たせる確率というのは、6000万分の1であり、
もし、A という候補者の政策が、B という候補者の政策よりも100万円多くアリスに対して、利潤をもたらすのであれば、
アリスが、投票を行うことで、得られる対価は、100/6000 = 0.0167円 となり、
投票に行くインセンティブは皆無と言える。
sortition により、代表者が選ばれれば、
選ばれた代表者の投票という仕事の結果の与える影響は非常に大きいので、
投票を行うインセンティブは高くなるという利点がある。
# 二乗型投票 quadratic vote 投票者アリスが「コスト」 C(w) を支払って、投票することで、
アリスの一票は、重み w となる。 例えば、$ C(w) = w^2 / 2 $ などで重みのある投票を行うことができる。
このコスト関数のモデルは、その微分が $ c(w) = w $ であるところから、
「二乗型投票」quadratic vote とは、どれだけ重み付けをしたいのか、という気持ちの強さを自然に表すモデルと言える。
![quadratic vote 1](/image/QV1.png) # Strawman の方法 1 - C(w) : w の重みを得るのにかかるトータルコスト - c(w) : w の重みから重みを1増やすときにかかるコスト(コスト) 人口に対する投票権をもった代表者の割合 p をランダムに選んできたとしよう。
投票者が選ばれているので、一票の重みは、1/p 倍に増えており、 同時に、一票の価格は1/p 倍されるので、 $ c(w) = w/p $ となり、
積分すると、$ C(w) = w^2 / 2p $ を得る。
投票者の数が非常に大きいと仮定すれば、この方法は、全員が投票する場合と同じ結果を得る。
というのは、もし、アリスが $ c(w) = x $ の重みを持っていたとすれば、
p の確率で、x 、1-p の確率で、0 の重みとなるので、
$ p*(x/p) + (1-p)*0 = x $ となる。
しかしながら、この方法では、
抽選投票 が必要なくらいに十分に人口の母体が大きい場合と、
投票の影響力の強弱がはっきりとわかれてしまっている場合とを、
区別して取り扱うことができないという欠陥がある。
# 方法 2 ![quadratic vote 2](/image/QV2.png) 直接投票 と、抽選投票 sortition による投票の両方をする権利が各個人に与えられる。
直接投票では、$ c(w) = M + w $ とし、つまり、
$ C(w) = wM + \frac{w^2}{2} $ となり、
抽選投票では、w =< M まで、c(w) = w/p の価格で票(の重み)を購入することができるようにする。
w > M の重みが必要であれば、直接投票の票を購入することができる。
各投票者に対する、票の重みには最大値 L > M が設けられているものとする。
もし、アリスが x > M の重みを持っていたとすれば、 p の確率で、抽選投票で、$ c(M)*p = \frac{M}{p} * p $ とのこりを直接投票で $ x-M $ 補う。 (1-p) の確率で、x - M の重みをもつので、 $ ( \frac{M}{p} + (x - M) ) * p + (x-M) * (1-p) = x $ もし、アリスが x =< M の重みを持っていれば、 p の確率で、抽選投票で、c(x)*p = x/p * p だけですますので、 $ \frac{x}{p} * p + 0 * (1-p) = x $ となる。まとめると、 $ min(\frac{x}{p},\frac{M}{p}) * p + max (x-M, 0) = x $
となり、この方法で得られる期待値も同じとなる。 しかしながら、この方法においても、問題があるように思われる。 閾値 M と比率 p を容認しなければならず、 より細かい状況において、問題があるように思える。 # 方法 3' おおまかに言えば、 重みが閾値 M 以上では、すべての 投票は、決定的に数え上げられる。 重みが、M/2 においては、投票者を半分にランダムに減らし、投票者の力を2倍とする。 重みが、M/50 においては、投票者を1/50 の比率で選出し、投票者の力を50倍とする。 実際のところは次のようにする。 抽選投票にかわる「条件投票」conditional voting を以下のように実装する $ q \in [ 0,1 ] $ をランダムに選び、 $ c(w) = q * e^{w/M} $ とし、 $ c(w) = M $ となるまで、 すなわち $ M = q * e^{w/M} $ $ \frac{M}{q} = e^ {w/M} $ $ ln M - ln q = \frac{w}{M} $ $ w = M * (ln M - ln q) $ となる アリスが $ x = c(w) $ の投票力をもつとすると $ x < M $ において $ x = q * e ^ { w/M } $ より、 $ w = M ( ln x - ln q ) $ これに、方法 2 と同様にして、 直接投票として、c(w) = M + w を加えることを可能にする。 これを調整して、期待値が x となるようにすれば良いのだが、 指数関数のもつ曲線の美しさに着目してさらに次のように改良する。 # 方法 3 ![quadratic vote 3](/image/QV3.png) $ e ^ {w/M} $ の曲線は縦方向にひろげることと、横にシフトすることが同じであるという美しい性質があるので、 変数 $ q $ を乗じるのではなく、$ M * e ^ {w/M} $ を右にシフトすることで、小さい値をえることを考える。 具体的には、 C(w) を得るのに、$ M * e ^ {w/M} $ を $ w = M * ln(q) $ からはじめて、 $ w = M * ln(x/M) $ まで終わるようにする。 つまり、$ w = M*(ln(x/M) - ln(q) ) $ となり、 これを $ q $ が $ 0 $ から $ x/M $ まで( $ q > x/M $ では、投票するインセンティブを持たない )積分したものが アリスの投票力の期待値となり、これは、$ x $ となる。 また、この条件投票において、 q の平均値は、$ q \in [0,x/M] $ において、$ q = x/2M $ であり、 したがって、$ w $ は常に、 $ M ( ln (x/M) - ln (x/2M)) = M * ln(2) $ という定数となる。 これはどのような投票者であっても、平均すると同じ投票のインパクトをもっていることを意味している。